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あれもこれも...!植物より 〜京都薬用植物園見学〜

  • 西村
  • 2023年11月28日
  • 読了時間: 5分

更新日:2023年12月21日

 皆さんが普段生活を送っている周辺には、どのくらい植物由来のものがあるのだろうか。実は植物から作られているものはたくさんある。元来自然は人の生活の近くにあったはずだが、だんだんと失われ、見えにくくなったり、意識されにくくなったりしている。人の生活の根元にあり、人が接し、扱ってきた身近な自然を発見した。

 京都市左京区、曼殊院や修学院離宮で賑わっている山中に、武田薬品工業株式会社の「京都薬用植物園」という広大な植物園がある。園内の植物を見学させていただきながら、園長の野崎香樹さんに植物園ツアーをしていただいた。

 園内紹介の様子をご覧いただきたい。植物園に行ったかのように読んでいただけると幸いだが、興味のある方はぜひ足を運んで、あなたの五感を使って植物園を見学してみてほしい。




 京都薬用植物園は、日本薬局方に収載されている生薬の基原植物を中心に、約2,900種の植物を保有・栽培している。漢方処方園には、代表的な漢方薬に配合される植物を処方ごとにまとめて植栽している。またツバキ園には、各地に伝わる古い品種を中心に、500品種余りのツバキを植栽している。重要なツバキの木があるお寺が京都に多いため、そのバックアップの株を管理・保全するという活動も行っている。

 敷地は9万4000平米で、東京ドーム2個分ぐらいの広大な土地で、そのうちの半分が展示エリアとなっている。普段は一般公開してる植物園ではなく、団体さん中心に依頼を受け、職員の方が案内するスタイルで開園している。医薬品の原料植物やルーツを勉強してもらう展示内容である。昔は、医療関係者中心での対応のみだったが、今年の2月に、博物館相当施設の指定を受けたことで、一般の方に薬用植物を見てもらえる形に対応を拡大し、イベントや見学会も行われている。


一般公開はしていないが、研修として予約が可能。以下のリンクから是非チェックしてみてほしい。




死を孕む「毒」の匙加減 〜薬と毒〜

 基本的にヒトを含む生物に害を与える物質として知られる「毒」だが、毒のなかには単に毒にとどまらず、薬効をもつものも存在する。「パルマコン」と言って、薬と毒は表裏一体であるということが知られている。前回掲載した毒展の記事でも毒について紹介しているが、第一弾として今回は、「薬用植物」から作られる薬と、その中でも「毒のある薬用植物」について深ぼってゆく。



朝鮮朝顔

 重要な薬用植物で、強い毒草。 江戸時代に外科医の華岡青洲が、全身麻酔薬で乳がんの摘出手術をした際、全身麻酔薬のメインの薬として「朝鮮朝顔」が使用された。 日本麻酔科学界のシンボルマークにも朝鮮朝顔の花が使われている。夏季だと、ここでもどーんと大きい花が咲いている姿が見られるそうだ。



ベラドンナ

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 「貴婦人の薬」と言われているのには、ベラトンナの使用方法によって納得がいく。写真のように下に向いた地味な花が咲くが、これが満開状態で、この後に真っ黒な実ができる。昔のヨーロッパでは、貴婦人たちが舞踏会でより美人に見せるために瞳孔を広げる(黒目が大きくなるから美人に見える)目的で、その果汁を垂らしていたそう。(失明覚悟で...!)このように、貴婦人の方々がよく使ってた薬っていう話があるらしいが、現代のカラーコンタクトの15.0mmくらいの派手なものを渡してあげたい。美はいつの時代も追求されている。


 ベラトンナは全草が毒だが、特に毒性の強い器官が地下部の球根のところで、高含量の個体では小指の爪ぐらいの量でも食べたら死んでしまうほど。ベラトンナの薬効を上手く使って治療する名医か、毒で悪化させてしまうヤブ医者か区別する言葉としてあるのが、「匙加減」で、ベラトンナが医者を見極める指標になってたという話もある。

 現代では、高圧蒸気処理をすると減毒され、薬効だけが残るということが分かっているので、そういう形で薬に加工して使う形が主だという。



毒人参


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 ソクラテスの処刑に使われた毒草で有名。写真のように、茎に赤い斑点みたいなものがあり、それが「ソクラテスの血」って言われている。







延命草

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 胃薬になる。 パッとみたら、ただの雑草で、しそに似ているが、食べると大変なことになる。「延命草」と書いて、命を伸ばす、元気になるって言われる、現代でも重要な医薬品である。胃腸薬や、ドリンク剤に「エンメイソウエキス」とカタカナで書かれているものは、この薬草が実際に使われている。





 

 鑑賞用の植物と違って、薬用植物というのは、見てるだけではその特性がわからないため、京都薬用植物園では、研修会という形で説明するようにしているという。延命草の他にも、無毒な山菜である「ニリンソウ」を猛毒の「トリカブト」と間違えて食べてしまう事故なども発生している。やはり、分かりづらいため、毒はもちろん植物の知識が必要である。今回紹介したものだけではなく、例えば子供に「マンドレイク」という毒草を伝える時に、ハリーポッターでは泣き声を聞いたら死んでしまうという伝説の植物「マンドラゴラ」として紹介されているなど、現代にも死を孕んでいる毒に対しては、まだ敏感な意識を感じる。私はつい、「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」などの植物パニックものの映画を思い出してしまう。


 薬も毒も、生きるも死ぬも、正しく知ることが重要だ。


(文 / 西村)



※植物園を見学させていただき、その情報を元に西村が独自に調べた記事となっております。正確でない情報も含まれているかもしれませんので、ご自分で薬草などを採取する場合は、専門家の意見を聞くようにしてください。


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