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ハーブ、最後にパラリだけではない

  • 西村
  • 2023年12月9日
  • 読了時間: 6分

更新日:2023年12月21日

 皆さんが普段生活を送っている周辺には、どのくらい植物由来のものがあるのだろうか。実は植物から作られているものはたくさんある。元来自然は人の生活の近くにあったはずだが、だんだんと失われ、見えにくくなったり、意識されにくくなったりしている。人の生活の根元にあり、人が接し、扱ってきた身近な自然を発見した。


 第一弾は、『死を孕む「毒」の匙加減 〜薬と毒〜』、第二弾は、『先人の知恵が薬となる』、第三弾では、『漢方薬を遡ると植物たち』、第四弾では『青々としたスパイス』という題でスパイスについて深ぼった。今回は、癒しのハーブについて紹介して、特集を締め括ろうと思う。




 ハーブと聞くと、料理の仕上げにパラリとするイメージがある。ということはアクセントだ。ハーブ類は料理でも人体に対しても最後のアクセントとして必要とされていると考えていた。例えば、私の実家では、ハーブの種類であるミントやローズマリーを育てており、料理やドリンクが仕上がるタイミングで庭に採りに行っていた。クセのある香りやハーブにしか出せない爽やかさを添えることは、必要不可欠であったが、あくまで仕上げだった。薬用ハーブ園を見学させていただいた。



ジャパニーズミント


 サクマドロップのハッカ味や、ブラックブラックなどのガムに使用されている、眠気覚ましにもってこいの衝撃的な植物。 ミントでも、「スペアミント」、「ペパーミント」などたくさんの種類を見せていただいた。その中でもメンソールというスースーする成分の含有量が圧倒的に高いため、ジャパニーズミントが薬に使用される。ハーブ類には、強い香りや味のあるものが多い。



カモミール


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 黄色い花を少し潰して、匂いを嗅ぐと青りんごのような甘い香りがした。 

ハーブティーの中でもよく「カモミールティー」などと呼ばれて耳にすることの多いカモミールだが、花を乾燥させて、お湯を入れるだけで完成する。リラックス効果と併せて、保湿効果も高く、例えば化粧水に「カミツレエキス」と書いてあるのは、この花を使ってのものだという。



イングリッシュラベンダー


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 多年草で、高温多湿に非常に弱く、京都で1番作りにくい植物かもしれない…という。ラベンダーは、「イングリッシュラベンダー」という名前にもなっているように、ヨーロッパの涼しいところの植物で、地中海からイギリスにかけて生息している。ラベンダーは、寒さに強い、暑さに強いなど、様々なタイプがあるが、これは寒さにはものすごく強いものである。逆に暑さや高温多湿にはめっぽう弱いという。



ティーツリー


 冬場、アロマとしてよく焚かれるティーツリーは、爽やかで癒される香りがした。 リラックス効果だけではなく、インフルエンザの予防や、風邪の予防に良いと冬場によく焚かれるという。



アーティチョーク


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 つぼみの部分は「アーティチョーク」といい、食材として流通している。品種改良をされてアーティチョークになったが、原種は「カルドン」という植物だ。食べる部分であるつぼみを大きくし、棘があったものを扱いやすく棘を無くしたのが、アーティチョークとなっている。





山椒



 山椒の仲間で、写真は日本の山椒、奥が中国の山椒だ。「華北山椒」と言って、 四川料理の麻婆豆腐とかに使う山椒は奥の中国の山椒である。ホアジャオ、漢字で書くと花椒。乾燥させたスパイスとしては流通しているが、生で食べられる機会はなかなかないらしい。日本の山椒はもっと舌の痺れを 感じた。

 今はちょうど(6月取材時)実山椒が出回る時期だという。それはまだ中の種が柔らかく、そのまま食べることができる。時間が経つと、茶色くなり、真っ黒になって噛めないほどに固くなるため、出回らなくなるのだ。チリメン山椒などに使われているのは、今ぐらいまでの時期の一瞬の時だけの貴重なもの。

 これも重要な薬で、どこを使用するか表示を見てみると、「果皮」との記載が。それはこの種の中には有効な成分が入ってないということを意味しており、薬として有効でない部分はちゃんと取りましょうということで、種を取った皮だけを使うという決まりになってる。キャプションに、「局」というマークががついていたのだが、重要な医薬品の原料植物ということを意味している。 そのような植物に関しては、品質規格が決まっており、山椒も果実の皮のみ使用可能となっているのだ。



柳蓼


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 舌に衝撃の辛味だけを残すこの植物。唐辛子とは違う、刺すような辛さがあるのに、味がなく、不思議な感覚になった柳蓼は、「蓼食う虫も好き好き」の語源になった植物だ。7月くらいから鮎の漁が解禁され、鮎の塩焼きを食べる時につける蓼酢というものがある。蓼酢は緑色の液体で、この葉っぱを酢で伸ばしたものだという。他にも、種から芽が出た時に、双葉の状態のものを収穫し、 お刺身のつまなどに添えられている赤紫の草が柳蓼なのだ。魚や、足の速い腐りやすいものに添えて一緒に食べられる。というのも、辛みの成分に抗菌作用や解毒作用があるといわれているため、昔から腐りやすいものと一緒に食べられていたという。


 菊の右下に解毒と記載があるが、刺身のつまに黄色い花が入っているのを見かけたことはないだろうか。あれは菊の花で、解毒作用として使われているのだ。大根もその役割を果たしている。今ではもう飾りとして、プラスチックで代用されることがあるが、元を辿ると全部意味があって食べられるものを添えていたのだ。




 薬用ハーブ園で見学させていただいたハーブや香辛料は、料理のアクセントとしてだけではなく、食料保存のために必要とされていた。抗菌作用であったり解毒作用は、食料と植物を組み合わせて保存するというナチュラルすぎる保存方法が古くから使われていたと知った。

その名残が現代でも飾りとして残っている。例えば刺身にのっている柳蓼や菊は、プラスチックでできているものも多い。保存技術が発展したとも言えるが、いつか無くなってしまいそうなこの植物をぜひ覚えておきたい。



 今回の取材で「遡る」という言葉を意識させられることが多々あった。生活の中で当たり前のように便利に利用している薬や調味料は、生きている緑から生まれていた。元来自然は人の生活の近くにあった筈だが、段々失われていってしまっていると感じる。今期の御草惣で私達は、そのような自然に対して興味関心を抱き、以前生活の根元にあり、人が接し、扱ってきた身近な自然を取りあげたいと考えている。


(文 / 西村)



※植物園を見学させていただき、その情報を元に西村が独自に調べた記事となっております。正確でない情報も含まれているかもしれませんので、ご自分で薬草などを採取する場合は、専門家の意見を聞くようにしてください。

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